元ヤン介護士の知佳のブログ

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官能小説『筒抜け』 第1話

益荒男様 作

官能小説『筒抜け』

この小説はShyrock様のご許可を頂き掲載しています。

母親と息子 「ママ、気持ちいい。」
 突然頭の上から若い男の声が聞こえてきた。それは蚊の鳴くような微かな響きだったが、静かに湯船に浸かっていた弘信は十分聞き取ることが出来た。慌てて見上げると、その声は換気ダクトからのようだった。
「駄目、出ちゃう。」
 もう一度、弘信が耳を澄ませていたので、今度は更にハッキリと聞こえて来た。切羽詰まった声だった。
 弘信がこのアパートの造りを頭の中に思い描いた。メゾネットタイプの二階建て3DKが左右二世帯振り分けに幾つか繋がった構造である。見てくれはそれなりだが、地主が相続税対策に急遽建てたものだから実態はプレハブアパートと大差無い。恐らく風呂場の換気ダクトが隣とつながっており、そのダクトを伝って秘めやかな会話が漏れて来たことに間違い無さそうだった。
 隣には三十代半ば位の女が中 学 生の息子と一緒に住んでいる。表札には田中とだけ書かれていた。入り口が道路に面しているので女所帯と知られたくないからだろう。玄関先でこの女と顔を合わせれば会釈くらいはするが、言葉を交わしたことは一度も無かった。この近所では一番と言える位の美人で、毎日夕方になると出掛けて行く。帰りは深夜だった。多分水商売だろう。


 暫く静かだったダクトから今度は揉み合うような気配が聞こえてきた。続いて肉と肉のぶつかり合うリズミカルな音が響いてくる。二人が裸で抱き合っている姿が弘信の目に浮かんだ。音の激しさから想像すると、後ろから激しく突き立てているような気がした。
(ママって言ってたよな)
 どう考えても二人がただならぬ仲に陥っていることは間違い無さそうである。中 学 生の息子ともなれば、恐らく毎日のように母親の身体を求めているに違いない。
(まさか、美佳は聞いてないだろうな)
 弘信が不安を覚えた。弘信自身が夕食前のこの時間に入浴することは滅多に無いが、娘の美佳は早めに風呂を済ませていることが多かったのである。
(注意せんとまずいなあ)
 隣から女の絞り出すような呻きが聞こえてきた。
「い、いい・・・もっと、もっと強く・・・」
 弘信はいつになく前が固くなっている自分に苦笑した。一定だったリズムが加速し始めた。女の喘ぎがそのリズムに合わせて一段と強くなって来た。
「あー、い、い、いー。」
 一際大きな声が響き、ピタッと気配が止んだ。二人同時に目的を遂げたようだった。
「もういいでしょ。続きは帰ってからね。」
「うん。寝ないで待ってるから、早くね。」
 弘信はなるべく音を立てないように気を遣いながら風呂場から出た。あれだけ声が筒抜けと言うことは、当然こちらの物音も隣に聞こえてしまうはずである。
(何と言って注意すればいいかな)
 弘信も隣と同じように高校生になった娘の美佳と二人暮らしである。妻の芙美子は五年前に子宮ガンでこの世を去っていた。
(あっちは母親と息子、うちは娘との二人暮らしだからなあ)
 チラッと美佳の姿を思い浮かべた弘信が慌てて首を横に振った。ここ一、二年でやけに女っぽくなって来た娘との二人暮らしが急に息苦しいものに感じられたのである。
「ただいま。パパ、今日は随分早かったのね。」
 玄関のドアが勢い良く開いて娘が帰ってきた。白いカーディガンに赤いチェックのミニスカート。足下はルーズソックスである。絵に描いたような女子高生ルックだが、スカート丈が極端に短い。最近は膝上何センチ等という規定は無くなったのだろうか。弘信がソファーに座った視線だと下着がほんの僅か見えていた。これでは町を歩いていても動いた拍子にパンチラになってしまうはずである。
「スカートが短すぎるぞ。」
 弘信が笑いながら言った。
「いいじゃん、これ位。この方が脚長く見えるのよ。それに、下だって見せパンなんだから。」
 美佳がそう言ってスカートを捲って見せた。リボンがあしらわれたデザインだった。それでもピンク色のレース地から下の翳りがうっすらと透けていた。
「分かった、もういい。」
 弘信が顔をしかめて横を向いたので美佳が可笑しそうに笑った。
「独身のパパには目の毒だった。」
「馬鹿言え、小便臭い小娘なんかに興味ないよ。」
 途端に美佳が目尻を吊り上げた。
「悪かったわね、小便臭くて。」
 美佳が鞄をテーブルに置き、服を脱ぎ始めた。狭い3DKのアパートに脱衣所は無いのである。
「おい、風呂場に入って脱げよ。」
 慌てて背中を向けた弘信が声を荒げた。
「小便臭い小娘に興味なんて無いんでしょ。」
 美佳が脱いだものを床に投げ散らかして風呂場に消えた。
 翌日、弘信が夜中に入浴すると、また隣から二人のじゃれ合う気配が聞こえてきた。何となくこちらの入浴に合わせているようで、それも気になる弘信だった。この調子だと娘の入浴中にも同じ事が起きている可能性が高い。
 隣の女は大抵夜中の一時過ぎに帰宅する。恐らく毎晩終電で戻るのだろう。次の日、弘信は終電近くなってから駅に向かった。暫く待つと電車がホームに入ってくる。この駅が終着なのでタクシーが何台も客待ちしていた。すぐに女が姿を現した。
「あの、」
 弘信が女に声を掛けた。
「はい、何でしょう。」
 女が一瞬身構えた。



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